カテゴリ:収益物件 / 投稿日付:2022/03/21 18:25
賃借人の家賃滞納

家賃を滞納したらすぐに追い出すことはできるのか
家賃を滞納するような悪質な入居者は、もはや大家にとってお客さんではありませんから、
一日も早く追い出して、もっと良質な人に貸したいものですが、実は日本の法律はそう簡単に
これを許してはくれません。
日本には「借地借家法」という法律があり、賃貸経営もこの法律が適用されます。
借地借家法は、賃貸人よりも賃借人が社会的弱者であるとして、その保護を目的とする法律のため、
ほぼすべての規定が賃借人にとって有利に設定されています。
そのため、家賃を1ヶ月分滞納したくらいでは、賃借人の居住が保護されるため、
たとえ賃貸人が家賃滞納を理由に契約を解除しても、賃借人自らが進んで出て行かない限り、
追い出すことは事実上不可能なのです。
家賃滞納者を追い出すまでの適切なスキーム
このようなケースは、賃借人が自ら退去することは非常に稀なため、法律に則り強制退去させる
しかありません。だからといって、勝手に部屋を開けて荷物を出してしまってはまずいので、
次のような段階を経て行ないます。
ステップ1:内容証明郵便による最後通告
内容証明郵便によって、滞納家賃の最終支払い通告とそれまでに支払いが確認とれない場合は、
賃貸借契約を解除する旨を記載し郵送します。
ステップ2:建物明渡請求訴訟を提訴する
期日までに支払いが確認できなければ、訴状を作成し裁判所に提出します。
なお、建物明渡請求訴訟は、特段の取り決めがなければ「賃借人の住所地」を管轄する裁判所に
対して手続きを行います。
但し、通常は賃貸借契約書において別途合意管轄裁判所が規定してありますので、そちらに提訴する
ことの方が多いでしょう。なお、滞納分が140万円以下であれば簡易裁判所、それを超える場合は
地方裁判所の管轄となります。
ステップ3:裁判
裁判期日になると、原告である賃貸人と滞納者である被告が裁判所に出廷します。
滞納金額などに争いがなければ、基本的にはいつ出て行くかの話し合いとなります。
1回の公判で和解がまとまらなければ、数回にわたる事もあり、最終的にまとまらなければ裁判所が
判決を下すこともあります。
ここで注意が必要なのは、建物明渡請求訴訟において判決によって明渡しを認めさせるには、
最低でも3ヶ月分以上の家賃滞納が必要と言われています。
よくあるのは、滞納者が法廷に現れず、かつ、答弁書の提出もないような場合は、
最初の公判で結審し、原告である賃貸人の主張が全面的に認められます。
和解の場合は「和解調書」が、判決の場合は「確定判決」が裁判所によって作成され送付されて
きます。これらの書類は「債務名義」と呼ばれ、これに従わない場合は強制的に従わせることが
できるという強い効力をもっています。この債務名義の獲得が、建物明渡請求において
最も重要なポイントとなります。
ステップ4:強制執行
滞納者が和解や判決で決めた期日までに自主的に退去しない場合は、強制的に退去させる事に
なります。まずは裁判所に対して強制執行の申立てを行ないます。
この際に先ほどの「債務名義」が必ず必要となります。その他「執行文の付与」と「送達証明書」も
必要になりますが、これについても同じく裁判所において手続きを行います。
つまり、強制的に建物を明け渡すということは、すなわち部屋から荷物を出すことになりますから、
それなりの人手が必要となります。これに当たり賃貸人は裁判所に対して予納金として7万円程度を
支払うことになります。なお、この費用は後日滞納者に請求されますので、そこから回収ができれば
ちゃんと戻ってきます。
これ以外にも別途執行補助者として民間業者などを賃貸人側で雇う必要があるため、
さらにその費用が実費で発生することとなります。
ステップ5:断行日
実際に滞納者を部屋から追い出す日のことを断行日と言います。
強制執行の申立てから2週間程度で明渡し催告日となり、そこからさらに1ヶ月後が断行日と
なります。当日は裁判所の執行官と業者らと一緒に物件現地まで行き、強制的に物件から荷物を
全部出してカギを交換して完了します。
なお、運び出した荷物はその場に放置されるわけではなく、裁判所が一定の場所に1ヶ月程度保管し、
その間に賃借人がとりにこなければ売却するか処分することとなります。
これで建物明渡しが完了となります。
このように、滞納者が自主的に退去しない場合は、最初の内容証明郵便の送付から明渡し完了まで
半年以上かかる可能性もあります。
そのため万が一家賃滞納が発生したら、3ヶ月分以上滞納した段階で、早めに手続きに踏み切ることを
おすすめします。
以上、センチュリー21SEEDでした。